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【ソーシャルメディア活用(3)ローソン】「入り口はソーシャルメディア、出口は店舗でポイント会員へ」

(※このコラムは、2012年02月13日の宣伝会議Advertimesに寄稿したものの転載です。)

「あきこちゃん」のアカウントで知られ、ソーシャルメディアを顧客接点として積極的に活用しているローソンは、「第二回ソーシャルメディア活用企業調査」(アジャイルメディア・ネットワーク=AMN調べ)でランキング3位に選ばれました。同社のソーシャルメディア活用について、CVSグループ広告販促企画部の白井明子さんにお話を伺いました。

「あきこちゃん」のキャラクター設定を社内で共有

――ソーシャルメディアを始めた経緯を教えてください。

白井:ツイッターを始めたのは2010年4月のことです。社長の新浪からツイッターに取り組むよう指示を受けており、そこから2カ月かけて「@ローソンクルー♪あきこちゃん」というアカウントを開設しました。

ツイッターを始めたばかりの頃は、恥ずかしながら何も分からないままやっていましたね。何をするにもまず知識がなかったので、セミナーに参加するなどして、周りと相談しながら体制を整えていきました。

当初はツイッターのアイコンとしてローソンのロゴを起用しようと考えていましたが、ロゴよりキャラクターの方が親和性をもって受け入れられるのではと思い、「ローソンクルー♪あきこちゃん」という設定で始めました。

――あきこちゃんに対してのお客さまの反応はいかがでしたか。また、運営していく上で注意していることはありますか。

白井 :お客さまとの親和性を強く感じられたことが大きかったですね。つぶやきの中に共感できるワードがあれば、お客さまはあきこちゃんを人格として見なしていただけるようです。また、ソーシャルメディアでは友達のお勧めだと受け入れられやすいので、あきこちゃんからのつぶやきを友達のお勧めのように思っていただいて、実際の購買にもつながっていると感じています。

運営面ではキャラクターがブレないように気をつけています。よく企業のツイッター担当者を「中の人」と読んだりしますが、もし「中の人」が異動になってしまった場合は大変ですよね。私自身もいつまでもソーシャルメディアの担当をやっているとは限らないので、キャラクターの設定をみんなで共有することで、情報発信を継続的にできる体制をつくっています。

その一つとして、フェイスブック内に掲載している4コマ漫画を冊子にして社内で共有しています。引き継ぎや新人が来た時に4コマを読んでもらうことで、あきこちゃんの設定や発言の内容がわかるので、論理矛盾を起こさないようにしています。

フェイスブックは30代サラリーマン、mixiは19歳女子

――様々なソーシャルメディアに対して積極的に活動されていますが、それぞれで使い分けをしていますか。

白井 :基本的には全てのつぶやきをツイッターから発信しています。その中で、フェイスブックとの相性が良さそうで、ご好評いただけそうなものを頻度を減らしてフェイスブックでも展開しています。モバゲー、GREE、mixiでは、それぞれつぶやく内容が異なります。たとえば「けいおん!」に関してはモバゲーやmixiの方が好評であることが多いので、それぞれのソーシャルメディアが持っている特徴と照らし合わせながら、一番反応がいい情報を発信しています。

――それぞれのソーシャルメディアが持つ特徴とは具体的にどのようなものがありますか。

白井 :フェイスブックは都内で働いている30代サラリーマンをターゲットに想定していますので、おいしい商品などの反応は凄く良いのですが、逆にコアなものへの反応は薄くなりますね。一方でmixiは19歳の女の子をターゲットに想定しています。反応が良いのはデザートなどの話題ですね。モバゲーやGREEはなかなか難しいですが、意外と地方に住んでいる主婦が多いという印象がありますね。

――運営する数が多いともちろん負荷も大きくなると思いますが、何か工夫されていることはありますか。

白井 :負荷分散を意識して行っています。メールマガジンとWebの運用担当者3人が、何時に何をするのかを決めてルーチン化し、それに沿って担当者が様々な部署からメールマガジンやあきこちゃんの原稿を集めています。

リアルタイムで投稿するというのではなく、毎週火曜日に17媒体の投稿スケジュールを組んで、それを「HootSuite」「Involver」に全部設定し、手動のものは別途行っています。

店舗オーナーに説明するため、社員の利用が進んだ

――効果検証はどうなさっていますか。

白井 :効果指標を定量化して毎週レポートにまとめて報告しています。使える効果検証ツールは全て使ってデータを出しています。ただ、それを業務に活かすという意味では、ツイッターであれば商品開発やコールセンターのカスタマーサポートに活かす、というような形で、ソーシャルメディアの特性を踏まえて考えるようにしています。

一例を挙げると、商品開発に関しては、ツイッターの検索でローソンというキーワードで検索し、同時にどのようなキーワードが含まれているか分析しています。分析することにより、どのような消費者ニーズがあるのか常に考えて取り組んでいます。

――ネガティブな反応にはどのように対応していますか。

白井 :カスタマーセンターに問い合わせなどがくることはありますが、ツイッターでは「あきこちゃん」という名前を付けていることもあってか、あきこちゃんに対して厳しいご意見をいただくことはあまりありません。

日頃からログや検索で目を凝らしているので、よくない風評などが起きてもすぐに検知できるような体制をとっています。担当者以外でも、社内では社員がソーシャルメディアを使っているので、社内の誰かからアラームが上がります。ソーシャルメディアを利用する上で、早めにケアをすることが大切だと思います。

――社内での利用は方針として始められたのですか。

白井 :一斉に始めたということではありませんが、施策としてソーシャルメディアクーポンを始めた時に「社員がソーシャルメディアを知らないと店舗オーナーに説明することが出来ない」という話になって、その時に利用していなかった社員も始めたという話を聞いています。ソーシャルメディア施策に連動して、社内での利用が増えたという流れですね。

――「ソーシャルメディアクーポン」を導入した際の店頭でのオペレーションはどのように行っていますか。

白井 :もともとPonta(共通ポイントサービス)の特典として、貯まったポイントを利用して店頭端末のLoppiで発券する「お試し引換券」というサービスがあります。「ソーシャルメディアクーポン」もLoppiから発券されるので、お店の人も「お試し引換券」と同じ要領で行うことができました。

――「けいおん!」などのアニメとのコラボをなぜ行おうと思われたのですか。

白井 :アニメとソーシャルメディアは親和性が強いと考えています。ツイッターでつぶやかれるハッシュタグの上位はアニメのもので占められており、親和性は高いと思います。これは他の調査でも分かっており、ソーシャルメディアで情報を伝えるのであれば、「このおにぎりおいしいですよ」と言うよりも、「けいおん!の唯ちゃんかわいいよ」と言った方がリツイートの数も大幅に増えますし、よりお客様に伝わるのではないかと思います。

――「みんなでつくる〜」を冠したキャンペーンを多く展開されているのはなぜでしょうか。

白井 :お客様と一緒に作ることで、ローソンへの愛着を持っていただこうと考えています。「みんなでつくるソーシャルメディアアイドル」キャンペーンでは、イラスト投稿サイト「pixiv」と音声投稿サイト「こえ部」でデザインと音声を募集し、ユーザーのみなさんの声を反映しつつ、キャラクターを作りました。
このような取り組みは今後も継続的に展開しつつ、「みんなでつくる〜」にはこだわっていきたいと思います。

――これらのソーシャルメディア施策の目指すゴールは何ですか。

白井 :前述の通り、弊社ではさまざまな施策を行っていますが、CRM(顧客関係管理)の根幹に共通ポイントサービス「Ponta」を位置づけています。まずは、ソーシャルメディア上でのコミュニケーションを通じてお客様が店頭へ来店されるきっかけを作り、店頭ではお客様に「Ponta」会員になっていただく。そして、「Ponta」の販促、施策で継続的な来店へとつなげるという流れを作っています。ソーシャルメディアでローソンへの入口を開拓し、出口は「Ponta」につなげるイメージですね。

――引き続きソーシャルメディアを活用して、それぞれに合った企画を積極的に提案されていくという感じでしょうか。

白井 :そうですね。さらに店舗のインフラにも進展があるので、それにあわせて今後面白い企画も出てくるかなと思います。あとはソーシャルメディアだけではなくて、新たな来店手段を提案していきたいです。ソーシャルゲームも興味はありますね。

――インタビュー雑感

ローソンさんは、非常に多くのソーシャルメディアに積極的にチャレンジしていらっしゃいます。ですが、ただやみくもに数多くトライすればいいというわけではなく、それぞれの「特性」を考えた上でそれぞれにあった企画を立案し、また相互の効果を考慮しながら、ソーシャルメディアを利用していくという姿勢を白井さんのお話から感じました。

また、複数のソーシャルメディアを利用する上では、「一貫性」も不可欠でしょう。ローソンさんの場合はどのソーシャルメディアや企画の取り組みをお伺いしても、最終的には「Ponta」への誘導というゴールとして設定されていることも白井さんのお答えから感じました。「特性の考慮」と「一貫性」がローソンさんの取り組みの重要な鍵であるのでしょう。(アジャイルメディア・ネットワーク)

インタビュー担当:AMNインターン 青山学院大学経営学部 芳賀ゼミ 糸井佑樹、人見彩菜

(※このコラムは、2012年02月13日の宣伝会議Advertimesに寄稿したものの転載です。)

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