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アンバサダーマーケティングの3つの入口|(2)クチコミ論

こんにちは、村井です。
前回に引き続き「アンバサダーマーケティング」の3つの入口についてお話します。 

(1)前回:顧客とのエンゲージメント論
(2)今回:クチコミ論 ←★ココ
(3)次回:ブランディング論

みなさまのマーケティング活動/コミュニケーション戦略と照らし合わせたり、共通点を探ったりしながら読んでいただき、「アンバサダーマーケティング」の解像度を上げる一助になりましたら幸いです。
 
※弊社AMNでは、対面による口伝えの会話だけではなく、ブログやSNS上の会話も含めて「くちこみ」と考えており、日頃から意図的に「口コミ」ではなく「クチコミ」表記を使用しています。

2つ目の入口:クチコミ論

 
本日お話するのは、「クチコミ論」です。
クチコミは生活者が会話の中でひろめるうわさ話や評判といった口頭のコミュニケーション。
口伝えによるものですので、基本的には会話をした相手にしか見えない/伝わらないものですが、2000年以降はブログや比較サイト、SNSなどが登場し、製品やサービスを利用した人の感想や意見が可視化されるようになりました。
 
そして、2010年以降は本格的にソーシャルメディアが普及し、個人がエンパワーメントされたことで、生活者の情報発信が加速しました。

その結果、ステマ・サクラといった残念な事象が社会問題に発展することが度々ありましたが、「利用者/愛用者の声」であるクチコミは購入検討時のみならず、購入後も私たちの心理や行動に影響を与えるなど、より身近なものになりました。
私自身もそうなのですが、気が付いたら自分がクチコミの「閲覧者」から「発信者」に変わっていた、という方も多いのではないでしょうか。
 
今回お話するのは、そんなクチコミに着目して、

  • 「 生活者との情報接点/情報流通経路の維持・拡大」

  • 「人軸のつながりが生み出す態度変容」

を目指す企業やブランドのコミュニケーション戦略です。

「クチコミ」を軸としていただくご相談の大きな特徴は、こんな時代だからこそ、(広告ではなく)クチコミで価値伝達をはかりたい。生活者との情報接点を増やして、生活者の態度変容を促したい”といった企業やブランドの事情/思いが出発点となっていること。
 
こんな時代の象徴的なファクトとして近年注目されているのが「情報流通量の飽和」「広告の信頼性低下⇔クチコミの信頼性向上」です。
これらにより、企業が発信したい情報を生活者に届けるためには、広告だけに頼らない新しい情報接点・情報流通経路が必要になってきていると考えられています。
 
まず、みなさまご存知の通り、私たちを取り巻く「情報の流通量」は消費できる量をはるかに追い越して、処理しきれないくらいに飽和している状態です。 
例えば、『情報大爆発―コミュニケーション・デザインはどう変わるか』だったり、

 『明日のプランニング』だったり、

 総務省の情報通信白書 だったり、

 検索をしてみると、その根拠を示す書籍やニュース、解説などの情報が(到底全部を読み切れないくらいの量)出てきますし、日々の生活の中でも「情報が多すぎる!」と感じる場面って、結構ありますよね!
 
さとなおさんの「情報“砂の一粒時代”」話をはじめて聞いた時、わかりみが深すぎてちょっとだけゾッとしたのですが、今さっきGoogleで「クチコミ」と検索してみたら、約 126,000,000 件もの情報がヒットして、やっぱりちょっとだけゾッとしました…汗。
個人的には、「検索時=情報がとめどなく増えていると感じる瞬間」だったりもします。

そんな状況が続く中、「広告」が生活者に与える印象/影響が変わってきたようです。
 
例えば、
ニールセンさんが2021年11月24日に発表した“海外市場における広告信頼度調査データの分析結果”によれば、市場別、広告、情報の信頼度Top5の中で、日本における情報の「信頼度」は広告より友だちや家族からの勧めが上位にランクイン。

マイボイスコム株式会社さんの「インターネット広告に関する調査」では、

■直近1年間にインターネット広告が表示された人のうち、内容を読む人は約36%
■直近1年間にインターネット広告が表示された際に行ったことは、「広告を間違えてクリックした」が広告表示者の5割、「広告を閉じた」が5割弱、
「広告をクリックした(意図的に)」が約26%

になっているんだとか…。


「広告が嫌われている」とまでは思いませんが、一生活者としてこの状況を俯瞰すると「広告以外にも頼りになる情報源が増えた。それが、クチコミだった」というのが自然でリアルなところかもしれません。

そして、クチコミはその信頼性の高まりと共に、接触者の態度変容にも有効な情報だと言うことが明らかになってきました。
 
これについても、検索すると新旧問わず結構な量の情報がヒットするのですが、私が見掛けた調査ですと、KDDIエボルバさんの「EC・通販ユーザー動向調査レポート2021“確報版”」では、

約5割の購買行動に口コミが影響、口コミによる購入決定・辞退経験は9割以上(全体傾向)

2021年6月30日 プレスリリース「口コミによる購入経験は9割以上、企業アプローチの購買意欲への影響度は6割 「EC・通販ユーザー動向調査レポート2021“確報版”」を発表!」

とのことですし、弊社が今年実施した「SNSのクチコミが購入・来店に与える影響調査(2022年)」では、個人のクチコミをきっかけとした購買転換が様々な商品・サービスで生じていることがわかりました。
しかも、1回購入して終わり…ではなく、継続して購入しているという人の割合が6割もいたのです。


私自身に置き換えて考えてみても、 “身近な人”が発するクチコミ情報はすっと自分に入ってきますし、“見知らぬ人”が発信している情報でも、関心のある商品やサービスなどのリアルな体験談や感想は説得力があるので、情報収集や購入検討の場面ではかなり頼りにしています。

クチコミで人から人へと情報が伝わっていく時には、発信者への信頼・共感といった感情を乗せてひろがっていくことが多いので、興味喚起されたり、自分ゴト化されたりしやすくなります。
特に、身近な人や憧れの存在、自分より先に〇〇している人など、自分が話を聞きたいと思っている人からのクチコミ情報であれば、なおさらです。
それが、クチコミが態度変容を生む理由のひとつのような気がしています。

ちなみに、企業やブランド/代理店の担当者様などとの情報交換やヒアリングでは、

・クチコミで新商品/サービスの話題づくりをしたい
・〇〇に詳しい/親和性の高い人のレビューで〇〇への理解を促進したい
・企業発信に向いていない/できない情報を第三者発信で伝えてほしい
・指名検索や特定キーワード検索の受け皿コンテンツを増やしたい
・濃い(熱量が高い)クチコミで、関心層の購入検討を後押ししたい
・ファンのクチコミで好意的な認知を獲得したい
・ファンのクチコミを評判形成につなげたい 
・UGCを販売促進につなげたい    

等々のご要望をよくお伺いします。
 
上記は一例ですが、このような目的を達成する手段のひとつとしてご相談をいただくため、【クチコミ論】と名付けてご紹介してみました。


人軸でひろがるクチコミ:「インフルエンサー」と「アンバサダー」との違いとは?


「新サービスの話題を盛上げて、認知拡大につなげたい。」
「ファンのオーガニックなクチコミを評判形成に活かしたい。」

そんな風に思いながらも、クチコミを活用することに二の足を踏んでいるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 
弊社では、企業やブランドと積極的につながり、クチコミや推奨をしてくれるような熱量の高いファンを「アンバサダー」と定義して、「アンバサダー」を軸としたマーケティング支援を行っています。

「アンバサダー」について説明する時には、「インフルエンサー」との違いを必ずお伝えするようにしているのですが、クチコミの活用やその方向性に迷っている方にとって、ひょっとしたらこれが何かの参考になりそうな気がするので、紹介させてください。
 
まず、クチコミを生活者との情報接点としてだけではなく、コンテンツと考える時、誰が発信するかはとても重要です。
 
そもそも、クチコミは発信者の視点や熱量を帯びる性質があるため、誰が発信するかによって情報のアウトプット(表現や発信頻度など)が変わってきますし、ソーシャルメディア上のクチコミの場合には、発信者のフォロワー数やフォロワーとのエンゲージメント状況などによって情報の届き方も変わってくるからです。
 
以下のスライドの左側の図をご覧ください。
こちらは、縦軸に熱量(対象となるブランドや商品などへの好意や推奨意向)、横軸に影響力(知名度やフォロワー数といった情報拡散力)を置いた「アンバサダー」と「インフルエンサー」の違いを表現したものでして、

・熱量が高い人が多く、影響力が高い人が少な目なのが「アンバサダー」。
・影響力が高い人が多く、熱量が高い人が少な目なのが「インフルエンサー」。
・一部(★印の重なり部分)で、熱量も影響力も高い人(オーセンティックインフルエンサー※)が存在
という傾向を示しています。

※オーセンティックインフルエンサー:インフルエンサーであり、なおかつ好きな商品を公言している人のこと

このスライドは、「アンバサダー」の話をすると「インフルエンサー」と混同されてしまうことが多いため、それぞれの特徴を知っていただけるように作成したものですが、違いはあれども「アンバサダー」も「インフルエンサー」も企業やブランド側の定義/呼称であって、どちらも同じく「人」であり、一人の生活者であることには変わり有りません。
 
なので、どちらが良い、悪いという話ではなく…。
 クチコミという人軸のコミュニケーションを考える時、どんな人をパートナーにすると、自社のマーケティング課題解決につながるのか。
どんな人たちに、商品やサービスの価値を伝えるパートナーになってほしいのか。
目的や商材の特性、その時の事情などを踏まえて、「今、誰に情報発信してもらうのが良いのか」を考えていただくのが良いと思います。
 
クチコミを醸成する目的や方向性に迷った時には、ぜひ上記の図も参考にしてみてください。 

弊社では、クチコミ1投稿あたりのリーチ量ではなく、クチコミのコンテンツとしての価値(質)と発信の継続性(総量)を重視しています。
そのため、継続的に多様なクチコミを増やすと同時に、それらをオウンドメディアや広告などのコンテンツとして2次活用することを推奨しています。これにより、リアルな口頭のクチコミを可視化したり、ソーシャルメディア上のクチコミの1投稿あたりのリーチを補うことにつながるためです。

★追伸:オーセンティックインフルエンサーって、本当にいるの?と疑問に思った方へ★


「インフルエンサー」と呼ばれる方々の中には、リアルに生粋の〇〇ファンだという方がいらっしゃいますし、お仕事としてレビューなどを引き受けたことをきっかけにファンになる方もいらっしゃいます。(過去の投稿を見ると、ファンを公言しているか等はわかります)
 
私の経験ばかりで恐縮ですが、例えば、過去に何度も某企業の商品レビュー(有料の記事広告)をお願いしたことのあるブロガーNさんがその企業が始めた「アンバサダープログラム」に登録してくださったことがありました。
ちょうど私が担当するプログラムだったのですが、イベントを開催した時にNさんが一般の方とテーブルを囲んで談話している姿を見て、本当の「ファン」ってこういうことだよなと感激したのを覚えています。
 
一方で、「アンバサダー」登録をしてくださる方の中には、特定分野の専門家や地域コミュニティなどでリーダー役を務めていらっしゃる「インフルエンサー」的な存在の方がいらっしゃることは多々ありますし、「〇〇アンバサダー」として活動を進めていく中で、その方の情報発信が興味関心や信頼を得てSNS上での影響力が高まり、インフルエンサー的な存在になっていくこともあります。
 
例えば、ワークマンさんが推進しているお取組みでは、「アンバサダー」がファッションショーやTV・雑誌などのメディアに登場する機会を積極的に創り、企業側がアンバサダーの露出/認知を高めていく支援をすることで双方がWin-Winの関係性になっているそうです。


自社にとっての「オーセンティックインフルエンサー」が存在するか、しないかを考える時には、そもそも、

  • 「ファン」を公言してくれる顧客がいるのか。

  • 自社への愛着や共感を育むようなコミュニケーションをとっているのか。

と考えてみることが大切。そんな風に、私は思います。


まとめ:オーガニックなクチコミは“好き”を活性化するところから

 
今回は、アンバサダーマーケティングの3つの入口のひとつである「クチコミ論」についてご紹介しました。
「アンバサダーとインフルエンサーの違い」についても、合わせてご案内してみました。
 
伝えたいことが伝わりにくい、こんな時代だからこそ、生活者発信の情報=クチコミにも目を向けてみませんか。

特に、愛用者やファンによるオーガニックで熱量の高いクチコミを重要視する場合には、ファンが自発的かつ継続的にクチコミをしたくなるような、“好き”を活性化するコミュニケーションが欠かせません。
 
弊社では、顧客やファンの“好き”を活性化するソリューション「アンバサダープログラム®」を提供しています。

下記にて概要資料をダウンロードしていただけますので、ご興味ありましたら、ご覧ください。

※アンバサダープログラム®は、アジャイルメディア・ネットワーク株式会社の登録商標です。


ここまで読んでいただき、どうもありがとうございました!
次回は、アンバサダーマーケティングの3つ目の入口「ブランディング論」についてお話する予定です。
 
それでは、今日はこの辺で。
 
すべてのブランドに、アンバサダーを。

 

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