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アンバサダーマーケティングの3つの入口|(3)ブランディング論

こんにちは、村井です。
今回も「アンバサダーマーケティング」の3つの入口をお届けします。

(1)初回:顧客とのエンゲージメント論
(2)前回:クチコミ論 
(3)今回:ブランディング論 ←★ココ

みなさまのマーケティング活動/コミュニケーション戦略と照らし合わせたり、共通点を探ったりしながら読んでいただき、弊社が推進する「アンバサダーマーケティング」の輪郭をつかんでいただいたり、解像度を上げる一助になりましたら幸いです。

3つ目の入口:ブランディング論

 
今回お話するのは、「ブランディング論」。
生活者に共感してもらったり、好きになってもらったりして、ブランドを選んでもらうこと。そして、選んでくれた人たちと一緒にブランドの価値を磨いていくこと(価値向上)を目指すコミュニケーション戦略です。
 
実は、アンバサダーマーケティングの入口にある考え方/戦略を洗い出して“3つ”に絞り込んでいく中で、「共創論」と「ブランディング論」を分けて話すか。「共創論」として話すかどうかをギリギリまで悩んでいました。
“4つ”としてしまえば良い話ではあるのですが(汗)、「ブランディング」に寄せたのには理由があります。
 
まず、ここ数年で、ご相談者様から「ブランディング」という言葉自体を聞く回数が確実に増えました。(この道12年ですし、その辺の違いを察知するのには敏感な方だと自負しています)
そして、「ブランディング」という言葉を聞く度に、その意味合いが以前とは変化していることを感じる場面が増えてきました。
 
一方で、「顧客/ファンとの共創」の取組に関するご相談が増えている実感もあります。
ただ、「なぜ、今、ファンとの共創を考えたいのか?」という理由を紐解き、ご担当者様の本音に迫っていくと「ブランディング」に行きつく…というケースがかなりあるのです。(「顧客/ファンとの共創」は目的ではなく、ブランディングの一手段であるということ)
 
そんな経験から、私がここで「アンバサダーマーケティング」の入口についてお話するのであれば、「ブランディング」の切り口で整理した方が実態に沿った話ができるのではないかと考え、このようなネーミングに至りました。(「顧客/ファンとの共創」については、またいつか別の機会にお話させてください!)
 
「ブランディング」の意味合いの変化というのは、ヒアリングなどでお話を聞く際にご担当者さまから求められていることとその背景にある意識が

1)「わたし」文脈の差別化    
       ↓
2)「わたしたち」文脈の差別化(共創化)

に変わってきたという点です。
 
まずは、1)2)について順番にご説明をすることで「ブランディング」の変化/進化をお伝えし、その後で「共創型のブランディング論」を起点としたアンバサダーマーケティングのご相談の特徴などについて触れたいと思います。


ブランディングの意味合い1)「わたし」文脈の差別化


 “「ブランド(Brand)」の語源が家畜を見分けるために飼い主が牛に押していた焼き印「Burned」だった”という話に象徴されるように、“ブランドは他者が認識するもの”というのが大前提でありつつ。
弊社が「アンバサダープログラム®」を事業の中心に据え始めた2013年からしばらくは「ブランドを生活者の心の中/記憶に残すこと」という意味合いで、「ブランディング」の話をされる方がほとんどでした。

・自社の商品やサービスの価値を正しく伝えたい
・機能的価値だけでなく、〇〇な情緒的価値を伝えたい
・ブランドの〇〇な世界観を構築したい
・商品やサービスに〇〇なイメージ/パーセプションを醸成したい
・顧客やファンに最新のブランド体験/機会を提供したい

等々、いずれも企業やブランドが主語(=わたし)で、自社が届けたいメッセージや、伝えたい情報(主に機能的な価値)、感じてほしい世界観などで生活者の心を惹きつける手段/体験プロセスのひとつとして、アンバサダーマーケティングに着目していただいていました。
 
そして、ここに前回お話したような「クチコミ論」の要素も混ざり合い、企業やブランドが主語の「わたし」文脈の情報を受取った生活者がそれぞれの解釈や体験などをもとに、思い思いにソーシャルメディア上で情報発信する状況が生まれていきます。

 生活者が主語となる、もうひとつの「わたし」のクチコミ情報。
いわゆる、UGC(User Generated Contents)です。
 
UGCには、憧れ・信頼・共感・期待といったポジティブな感情もあれば、残念・嫌悪・不信といったネガティブな感情がのせられていることもあります。
企業やブランドが伝えたいこととの間には大きな乖離があったり、広告と比べるとひとつひとつの発言/情報の大半はリーチが小さかったりするのですが、様々な価値観を持つ生活者が主語(=わたし)で、ブランドの価値(特に情緒的な価値)を伝える役割を果たすことにつながるものです。
 
とりわけ、ブランドのファンによるUGCはマス広告のように画一的なメッセージではなく、愛用者である「わたし」の十人十色なフィルターを通してブランドの魅力・価値を発信してくれます。

しかも、ブランド名や#ハッシュタグ検索をすれば彼らの投稿をリアルタイムで見る事ができますし、投稿コンテンツとしてソーシャルメディア上に蓄積されていきますので、企業やブランドにとっては生活者のリアリティとして資産化されてくのです。
 
こうして今日も、企業やブランドが主語の「わたし」文脈の情報発信と生活者(特に、顧客やファン)が主語の「わたし」文脈の情報発信とが密接に結びつき、ブランドの魅力や価値を伝える力となっています。
 
その中で、ブランドの魅力・価値を生活者に(再)認識してもらうことを前提に、このような状況を創り出すにはどうしたら良いのかというご相談をいただくことが増え、ファンの“好き”を活性化し、推奨を促すソリューション「アンバサダープログラム®」のご提案につながってきました。
 
これが、アンバサダーマーケティングの入口にある「ブランディング」の意味合いのひとつ、「わたし」文脈の差別化意識です。


ブランディングの意味合い2)わたしたち文脈の差別化(共創化)

 
前述のような、
・企業やブランドが主語の「わたし」文脈の情報発信
・生活者(特に、顧客やファン)が主語の「わたし」文脈の情報発信
について、以前どこかでどなたかが

「企業発信のメッセージ=自己紹介」
「顧客/ファン発信のメッセージ=他己紹介」

と称しているのを聞きました。
思わず、心の中で「うまい!」とつぶやいてしまう位に、納得感が強かったのを覚えています。
 
確かに、この現象/状況?を俯瞰してみると、それぞれの「わたし」が特定のブランドや商品などについて情報発信しているので、「わたしたち」でブランドの魅力を発信しているとも言えます。
 
それに、生活者(特に、顧客やファン)が主語の「わたし」文脈の情報発信においては、ファン同士が#ハッシュタグ投稿などでつながり、ファンコミュニティ化していくことで、「〇〇好きなわたしたち」としてブランドの魅力を発信してくれることもありますよね。
 
あれ、もしかして…。
コミュニケーションの主語が「わたし」から「わたしたち」に変わってきていない??
少し視点を変えた時、「企業やブランド」だけが、ブランドを語る主体(わたし)ではなくなったんだなぁと思いました。
 
それと同時に、数々の「アンバサダープログラム®」をみていく中で、自発的に推奨したり、応援したりして、自分たちの仲間になってくれるようなファン/アンバサダーの存在に気がついたブランドから順に「わたしたち」になっていく感覚がありました。
ブランドとファンとが、同じ方向を向いてコミュニケーションしている。
「わたしたちで、一緒に伝えよう!盛り上げよう!」という感じです。
 
たまたまかもしれませんが、私が携わってきた「アンバサダープログラム®」の多くは、個別の商品やサービスの提供価値だけではなく、企業やブランドが「その商品やサービスを通じてどんな未来を実現していきたいのか」「どんなビジョンを具現化したいのか」という社会的価値や世界観ごと好きになってもらってもらうことを意識していました。
 
けれど、それをいきなり伝えると妙に堅くなったり、ファンにとって愛着のある商品やサービスの話とは少しだけ話が遠くなったりして、それを退屈に感じる人や離脱する人が出る可能性があるため、プログラム全体としても、ひとつひとつの企画としても、常にどう入れ込んでいくか工夫が必要でした。

ただ、向き合いのご担当者さま達がファンに要求するスタンスではなく、どうしたらもっと喜んでもらえるか。楽しみながら理解してもらえるか、とファンに寄り添ってくださったことより、「アンバサダープログラム®」に関わるみんなの視点と距離が近付いて、何やらわからぬ“一体感”を感じたことが多々あったのです。(この場を借りて、お世話になった皆様に改めて御礼申し上げます。)
 
当時はまるで意識をしていなかったのですが、自分の病気療養/休職中に「パーパスブランディング」の事例がマーケティング界隈で話題になっていることを知り、「ああ、自分たちが必死でやっていたことは、これだったのかもしれない。」と複数の点がつながって線になり、数々の取組に新たな名前をつけてもらったような気がしました。(自分が不勉強なだけ、とも言います…汗)
 
というのも、「パーパスブランディング」は、自社の存在意義(パーパス=WHY)を定義して、社内外からの賛同や共感を得ることでブランドに対する信頼や愛着を高め、購買や推奨行動につなげていこうとするものですが、「アンバサダープログラム®」を通じて知ったパーパスに共感したファンは率先して家族や友人に話をしたり、SNSで紹介したりして、「パーパスへの共感の輪」を拡げるパートナーにもなってくれるからなのです。 

これはまさしく、パーパスを支持する「わたしたち」文脈のコミュニケーション。共創型のブランディングと言えると思います。
 
上記のような経験から、アンバサダーマーケティングの入口にある「ブランディング」の意味合いのもうひとつは「わたしたち文脈の差別化(共創化)」意識だと感じています。

選ばれる理由(価値)をファンと一緒に伝え、創りつづける、共創型のブランディングコミュニケーション

 
ここまで、ブランディングの意味合い/コミュニケーションの主語が「わたし」文脈から「わたしたち」文脈に変わってきたという話をしました。

流れで言うと、上記のような感じでしょうか。(自分もそうなのですが、従業員が自社の話をする時に「わたしたち」と語ることもありますので、それも追加してみました)
 
先程パーパスブランディングの話を出しましたが、このような「わたしたち」文脈で弊社にいただくご相談やご要望の多くは、

・パーパスの推進・具現化を推進したい
・ブランドが提唱する〇〇という新習慣を根付かせたい
・〇〇で日本おける新市場を開拓したい/浸透させたい
・ブランドが支える〇〇文化を継承していきたい  
・〇〇業界を盛上げていきたい

といったブランドの社会的価値創出に関わるものです。
 
総じて、生活者に自社のパーパスや〇〇がある未来に共感してもらったり、ブランドストーリーごと好きになってもらったりして、商品やサービスを選んでもらうこと。そして、そんな自分たちのブランドを選んでくれる人たち/ファンと一緒にブランドの価値を磨いていきたい!…というご担当者様の熱い想いがあるように私は感じています。
 
上記は一例ですが、このような目的を達成する手段のひとつとして、価値観を同じくする顧客やファンの協力が必要というご相談をいただくため、【共創型のブランディング論】と名付けてご紹介してみました。
 
ブランドの想いや未来像はそこで働く人たちだけではなく、生活者にとっても「ブランド選択の指針」のひとつになります。
ファンにとっては「ブランドを選び続ける理由」にもなります。
 
だからこそ、そこに至った背景や途中経過・結果などをファンに共有する機会・場を設けて相互理解を深めたり、日常生活の中ですすんで語りたくなるような仕組みをつくったりすることが「わたしたち」文脈のブランディングコミュニケーションを加速し、生活者の心の中に「ブランドの価値」を深く刻んでいくことにつながっていくと思います。
 
そして、自社と近しい価値観を持つファンとの良好な関係性を維持し、ファンとつながり続けることは、彼らと一緒に「ブランドが選ばれる理由」を創り続けることにもつながるのではないでしょうか。


まとめ:どうやって選ばせるかではなく、どうしたらもっと好きになってもらえるか

 
今回は、アンバサダーマーケティングの3つの入口のひとつ「ブランディング論」についてお話しました。
 
全て読んでいただいた方はお気づきかと思いますが、3つの入口は複雑に絡み合っていてリンクしているケースが非常に多いのです。
これは、ひとつの戦略では解けない問題/課題が存在していることの現れであり、アンバサダーマーケティングの面白さでもあると認識しています。
 
そして、「ブランドの価値をどう伝えていくか」「どう向上させていくか」と考えた時に、顧客やファンと一緒に価値を伝えたり、新しい価値を創ったりしていく共創型のブランディングは、アンバサダーマーケティングと親和性が非常に高いとも感じています。
 
情報量や選択肢が多く、商品やサービスを「選ぶ理由」や「選ぶ動機」が見えにくいこんな時代だからこそ、“どうやって選ばせるかではなく、どうしたらもっと好きになってもらえるか”と発想の転換をしてみませんか。
 

AMNでは、ファンにもっと好きになってもらい、ファンと共にその“好き”の輪を拡げることを目指す「アンバサダープログラム®」を推進しています。
 
Webサイトでは、「アンバサダープログラム®」を導入していただいた企業担当者様へのインタビュー/事例紹介をしていますので、ご興味ある記事がありましたら、ぜひご一読ください。

 
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
それでは、今日はこの辺で。
 
すべてのブランドに、アンバサダーを。

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